<感想ネタバレあり>
新聞屋さんから招待券をもらったので、遅ればせながら「かぐや姫の物語」を観て来ました。
「かぐや姫」といえば、幼い頃に絵本で読んだ程度。
ラストは必ずといっていいほど、
「おじいさん、おばあさん今まで育ててくれてありがとう。わたしは月へ帰ります。さようなら。」
当時の私は
(どうして月へ”帰る”んだろう?月にはウサギしかいないはずなのになぁ~)とボンヤリ思う位でした。
この度、この映画で
・何故かぐや姫が月へ”帰る”のか
・何故かぐや姫が月から来たのか が、わかりました。
(図書館で本を読みましたが、ほぼ忠実でした。)
キャッチコピーに使われている「罪」と「罰」。
「罪」とは、月という清らかな世界(極楽浄土)にいながら、穢れた地球(下界)に憧れたこと。
(かぐや姫は「神」なので、「人間」に憧れるなんて言語道断なわけです。漫画”聖☆おにいさん”のブッダとイエスは平和ですが・・・)
「罰」とは、地球で様々なつらい体験をさせられること。
”もうこんな所にいたくない!もう帰りたい!!”とかぐや姫が心から願った瞬間に、許されて、月からお迎えが来たわけです。
そして、天女の羽衣を羽織った瞬間に、下界での出来事はキレイサッパリ忘れてしまう仕組みになってるらしい・・・。
つらかったことのみならず、楽しい思い出までも全部。
なんて残酷な物語なのか・・・。
鑑賞後に見た公式サイトでは、高畑監督が解説を書いています。
「ハイジへのオマージュ」とのことですが、なるほど~と納得しました。
ハイジもフランクフルトでロッテンマイヤーさんに教育され、アルムの山を想い、ついにはノイローゼになってしまいます。
かぐや姫も、相模という教育係に窮屈な教育を受けるのですが、こちらは(竹から生まれた時点で常人に非ずなので)ハイジと違ってソツなくこなします。
それでもやはりノイローゼ気味にはなり、育った故郷を思いだします。
ハイジは山におじいさんがいるので帰ることができたけど、かぐや姫はおじいさんごと都へ来ちゃってるので、帰る故郷がない(><)
ハイジより数倍かわいそうなかぐや姫・・・。
そしてこの時代(平安時代?)、女は誰かの嫁にならなければ生きていけないというしきたりに心底ウンザリし、かぐや姫のおかげで富と位を得て人間変わってしまったおじいさんに絶望し、美しいというだけで求愛してくる男たちに嫌悪し・・・。
かぐや姫の味方はおばあさんだけで、孤独を深めていく様子が痛々しかったです。
そんなかぐや姫の苦悩の他に描かれているのは、美しい里山の風景。
四季の移り変わりなど、美術さんたち素晴らしい仕事ぶりでした。
実写では演出しきれない、アニメならではの演出も多く、アニメ映画っていいなぁと心から思える作品でした。
そして、特筆は久石譲の音楽。
月からのお迎えが来た時の、ピーヒャラチャカポコしたケルト風音楽に、じんわりと泣けてしまいました(;_;)
あの世に行く時に聴きたい曲ナンバーワン。
なんというか全てのことを”許された”というか、”赦された”というイメージ。
(早速サントラを相方に買ってもらいました)
久石氏は「風立ちぬ」に続いて神がかっています(^^)
一番最後に、赤ちゃん時代のかぐや姫の姿が月に映ります。
人が一番幸せなのは生まれたての赤ちゃんの時だけなのかもなぁ、とシミジミ感じました。(
N子さん無事にご出産おめでとうございます♪)
それにしても、1,000年以上前に書かれた作品が仏教SFで、百人一首同様に現在も読まれているってスゴイ。
映画館を出たら、夜空には見事な大満月。
なんてタイムリー☆